事務所の中が寒い。
事務所と呼んでいるが、ふつうの居住用賃貸ワンルームマンション。
単身者用の、ごくごくありきたりの鉄筋コンクリート造りの建物だ。
私の自宅も同じく鉄筋コンクリート造りのマンションだが、こんなには寒くない。
自宅の暖房は、ホットカーペットだけ。
電気ストーブを持っていたこともあったが、使わないので捨てた。
エアコンはもちろんついているけど、夏場に冷房として使うだけ。
私はこの事務所で、生まれて初めて「エアコン暖房」というものを使った。
エアコン暖房のスイッチをONすれば、すぐに暖かい風が吹いてくる。
その幸せにひたっていて、事務所の寒さの秘密なんて知ろうとも思わなかった。
だが、私は気が付いた。
エアコン暖房を切った瞬間から、夢から覚めていくように部屋の空気が冷えていく。
もちろん窓が開いているわけじゃない。
換気してもいないから空気は動かない。
だからなおさら、部屋の空気が音もなく冷たくなっていくのが感じられる。
壁、床、天井、そのすべてが冷たい。犯人は君たちか!
異変(?)に気付いたのは最近のことだ。
4時半の営業終了時刻になると、まずエアコンのスイッチを切る。
コーヒーカップと電気ケトルをササっと洗って、トイレを済ませる。
パソコンとテザリングに使っているスマホを片付け、コートを着てマスクをつける。
そんな帰りのルーチンが、すっかり身に付いた今日この頃。
4時半が近づいてきたら、「そろそろもういいか~」と早めにエアコンを切るようになった。
おっとそういえば、と思い出してパソコンで調べもの。
ふと気づくと空気が冷たい。
今、エアコン切ったところだぞ。
温められた空気はどこに行った?
そのとき床がやたらと冷たいことに、やっと気付いたというか思い出したというか。
エアコンで空気は温められるが、床はまったく温かくならない。
壁をさわると冷たい。天井はコンクリートで、さわるまでもない
床はフローリング風ビニールマットだ。
コンクリートの上に直接貼ってあるのだろう。
壁にさわってみる。
冷たくて、硬さを感じる。
コンクリートの壁に直接壁紙が貼ってあるようだ。
天井はさわるまでもない。
見るからにコンクリートがむき出しだ。
そういえば、デザイナーズマンションって聞いたような気もする。
一時期流行った、おしゃれな「コンクリート打ち放し」というやつだな。
そりゃあ冷たい・・・、寒いわけだ。
しかもこの部屋は最上階の角部屋。
壁の向こうは外。
コンクリート天井の上も外。
この狭い事務所の空気ごときは、あっという間に冷やすのだろう。
タイミングよく?良さげな賃貸物件を発見。これは見に行かねば
もうすぐ春だから、まあいいか。
暖かくなれば、また快適な事務所に戻るだろう。
しばらくはここで、がんばっていこうか。
・・・などと考えたときに限って、なかなか良さげな賃貸物件が出てくるものだ。
春の引っ越しシーズンだからだな。
ちょっと遠いけど、家賃も安いし条件もピッタリかも。
よし。
今日は早仕舞いして、帰りがけに見に行こうっと。